前立腺疾患

前立腺とは

前立腺とは前立腺は直腸と恥骨の間にあります。大きさはクルミ大程度で、尿道とこれに合流する精管を取り巻いています。分泌される前立腺液は精液の一部となって精子を保護したり、精子に栄養を与えたり、精子の運動機能をサポートしたりします。
前立腺は加齢とともに肥大する傾向があります。前立腺が肥大すると前立腺の中央を通っている尿道が圧迫されて排尿障害などを引き起こします。

慢性前立腺炎

急性前立腺炎が慢性化するケースがある一方、長時間のデスクワークや運転で同じ姿勢をとり続ける方、ストレスを受けている方がなりやすいといわれています。中・高齢者に多い前立腺疾患のなかで比較的若い世代(20〜40歳代)に発症例が多いのが特徴です。骨盤内の血流が悪化することが原因だと考えられています。前立腺を圧迫する姿勢(バイクや自転車)、不規則な生活、睡眠不足、精神的なストレスなどがこの病気の危険因子であると考えられています。
会陰部(陰嚢と肛門の間)、下腹部・股間部・睾丸・尿道・陰茎などに鈍痛や不快感、排尿痛、射精時痛、頻尿、残尿感などが現れることもあります。
慢性前立腺炎の治療法は確立されておらず、薬によって炎症を抑える治療が主体となります。また、ストレスが原因の場合、ストレス要因を取り除くことが症状の軽減につながります。

急性前立腺炎

尿に含まれる細菌に感染し、前立腺が炎症を起こす急性の病気です。若い方では性感染症による発症ケースも多く見られます。38℃を超える発熱、頻尿、排尿痛、排尿困難などの症状が強く出ます。悪化すると体の震えや寒気、筋肉痛や関節痛、尿閉などの全身症状が出ることもあります。
尿検査によって細菌感染の有無を調べ、また直腸診で炎症状態を確認します。
治療は抗生物質の点滴や内服薬の服用が中心となります。全身症状が強く出ているようなケースでは入院が必要なケースもあります。
前立腺肥大症を合併しているケースも多く、前立腺炎の治療と並行して前立腺肥大症の治療を行うこともあります。

前立腺肥大症

前立腺は加齢とともに肥大化する傾向があり、中年以降に前立腺肥大症を発症すると、尿道を圧迫するために頻尿や排尿困難など、さまざまな排尿障害の症状を生じます。
尿の勢いがなくなる、出したいのに尿が出てこない、排尿中に尿が途切れる、力まないと尿が出にくいなどの排尿症状があるほか、トイレが近い(頻尿)、急に強い尿意が起こる(尿意切迫感)、尿漏れする(尿失禁)などの蓄尿症状があります。また、尿後に残尿感や切れの悪さを感じたりします。
前立腺肥大症の疑いがある場合、症状を詳しくお伺いするとともに、超音波検査、尿流検査、尿検査、血液検査などの検査を行います。
前立腺肥大症の基本治療は薬物療法です。薬物治療の効果が得られず、また尿路感染症、膀胱結石、腎不全などの合併症が改善しない場合には、手術を行って前立腺を切除します。尿道から内視鏡を入れて電気メスで前立腺を切除する手術(TURP)が一般的ですが、患者さんの負担が小さいレーザーを用いた前立腺核出術や前立腺蒸散術も登場しています。

前立腺がん

日本人には比較的少ないがんでしたが、最近では増加傾向にあります。早期にはほとんど自覚症状がありませんが、最近ではPSA(前立腺特異抗原)検査によって的確なスクリーニングができるようになり、早期の発見が可能になってきています。PSAは前立腺にがんや炎症がある場合に高値になります。検査で4.0ng/ml以上を指摘されたら泌尿器科で前立腺がんかどうかの専門医の診察を受けましょう。直腸指診、腹部超音波検査、MRIなどの検査、組織を採取してがん細胞の有無を調べる生検などによって診断します。
前立腺がんが進行すると頻尿や残尿感を感じ、血尿が見られることがあります。骨やリンパ節に転移すると痛みを感じるようになります。
がんの病期(ステージ)や転移の有無等によって、監視療法、手術(外科治療)、放射線治療、内分泌療法(ホルモン療法)、化学療法などから患者さんに最適な治療が行われます。
手術は基本的に前立腺全摘除術となります。開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援下手術などの術式があります。手術後に尿失禁や性機能障害(勃起障害)の合併症が出るリスクがあります。
他の放射線治療や化学療法などでも合併症や副作用が考えられますので、医師の説明を十分にご理解いただき、適切な治療法を選択してください。